ペテン師は誰だ!・1

絵板もの

バショウとブソンは、ロケット団特務工作部の工作員だ。現在は、潜伏先のコガネシティのアパートで兄弟として暮らしている。
二人の身元保証人はシラヌイ博士。
コガネに派遣された当時は、ロケット団の事務方が偽名を使って保証人になっていた。しかし、事務方の負担が大きくなってきたため、個人的に付き合いのある博士がこの役を引き受ける形となった。その博士から、バショウとブソンに相談事が持ち込まれた。
美術館の展示物であるコハクの置物の中に、博士の研究に関するヒントがあるらしい。それを是非とも入手したいのだが、研究そのものが団内でも極秘なため、事を大きくしたくないというものだった。
ロケット団の正式な任務ではないが、他ならぬシラヌイ博士の頼みだ。引き受けないわけにもいかないだろう。
二人は早速街外れの美術館へ下見に出かけた。

オレンジと黄色がマーブル状に合わさった綺麗な石が、ニビ色の金属の台座に置かれている。この展示品の主役は、どうやら石ではなく台座らしい。説明書にも、美術的価値があるのは台座と明記してある。
鼻先がケースに触れそうなほどに顔を近づけるブソンに、その時背後から声がした。
「そこに少しでも触れると非常用ブザーが鳴りますよ。気をつけて下さい」
振り向くと、そこには美術館の女性が立っている。フロア出入り口に腰掛け、常時観客をチェックしているスタッフだ。片手にひざ掛けを持っているところから、ブソンの妙な行動に気づき慌てて走ってきた様子だ。

「ブザー? 防犯ブザーがあるのか?」
「もちろんです。ここは美術館ですから、どの展示品にも防犯装置がついていますよ」
女性は、当たり前だろうという表情でブソンを見つめる。
派手な赤い縁取りのメガネを持ち上げる仕草が鼻についたが、金髪男は少し眉をひそめただけで何も言わなかった。
「それは大変失礼しました…ブソン、もう行きましょう」
謝罪を口に目礼しながら、バショウは兄の片ヒジを軽く叩いて外へ促す。
出口の扉へ向かう二人の背を見送り、女性スタッフは肩をすくめてため息をついた。