ペテン師は誰だ!・2

絵板もの

二日後の夜。特別配達局の見習い団員モンドが、シラヌイ博士の使いでやってきた。
先日の下見の後すぐに博士に連絡をし、必要な機材を送ってほしいと頼んだのである。
美術館の防犯システムは、それほど難しいタイプではなかった。装置それぞれが独立しているのではなく、設定のすべてが一括管理になっている。システムの中心に少々手を加えれば、すべての装置の動きを自由に変更出来るのだ。
ただ、そのためにはいくつかのパスワードが必要になる。博士に頼んだ機材とは、そのパスワードを調べるためのものだった。

用意されたお茶とお菓子に手をつけながら、モンドは不思議そうな表情でブソンを見た。
「そんなもので、システムのパスワードが分かるものなんですか?」
「こいつの中には、乱数表をもとにしたデータがギッシリと詰め込まれているんだよ。あのシラヌイ博士のお手製だぜ。分かるに決まってんだろう」
まるで自分の事のように得意げな青年に、モンドは苦笑を浮かべながらおずおずと、
「で、でも…博士が天才なのは知ってますけど、あの人は生物班ですよね…」
「んな事関係ねぇんだよ。それよりモンド。お前、またあの赤い車で来たんじゃねぇだろうな」

ブソンの言っているのは、モンドが仕事で使う真っ赤なジープの事だ。ロケット団の「R」のロゴが車体に入っているため、目立つ事を嫌う特務の二人から使用禁止にされていた。
「えっ…と…いえ…あの…それはその…」
「てめぇ…っ! またここに来るのに乗ってきたなっ!?」
ただでさえ大音量のブソンが、ますます声を荒らげる。それにビクリと体を震わせながらモンドは半べそで応えた。
「す、すいません。でも、ちゃんと公園の奥の茂みに隠してきましたから…」
その公園は、敷地の外れに無数の木々をたくわえた森林公園だ。夜の茂みは誰一人近づかない暗闇になる。

「モンド、次回からは単車で来なさい」
隣のキッチンでコーヒーを落としていたバショウが、カウンター越しに言った。
「でも、荷物が多いとバイクは難しいんですよー」
「バショウでも乗れるんだから、根性で乗ってこい」
「そんなムチャ言わないでください」
「ブソン、一言余計です」
ピシャリと言い放ち、バショウはキッチンからリビングへ移る。
「決行は明後日の夜です。モンドは手はず通りに来て下さい。石を受け取るだけですから、時間厳守で頼みますよ」
「石を受け取るだけなんだからバイクで来い」
「……分かりました…」
ブソンに睨みつけられ、モンドは首を縦に振るしかなかった。