ペテン師は誰だ!・16
それから二日後の夜。
コジロウを送って行ったモンドが、その足でコガネシティの二人のアパートへ客人を連れてやってきた。いや、客人などと洒落たものではない。なぜなら、それはあのバンナイだったからである。
信号待ちをしていたモンドの軽自動車に突然乗り込み、強引にここまで案内させたらしい。
怪盗の奇抜で派手な姿ではなく、気のよさそうなごく普通の青年だった。
「それで…普通の一般人な貴方が、我々になんの用ですか?」
バンナイの正面に座り、いらついた声ですこぶる冷たく言い放つバショウ。
「関わりを持たない約束だったじゃありませんか」
「それはそうなんだが、思い出した事があったんでこうして出向いてきたんだよ」
「くだらねぇ事だったら、その場でぶっ飛ばすから覚悟しろよ」
脅すようにうなるブソンにもまったく動じず、青年はひどく軽い口調でしゃべりだした。
「倉庫から持ち出したコハク…あれは模造品だ。あそこは防犯装置の試験をする部屋で、その新しいシステムの試作品だったんだ。当然、使う美術品は偽物さ」
「ああ?…あれを本物だと言ったのはてめぇだぞっ」
「本物は美術館の展示品の方なんだ。つまり最初に盗んだものが本物だったという…いや…悪かったな」
では本物はどこに? そう…本物は最初の決行時に、どこかへ落としてしまっている。
困ったような笑みで上目づかいに二人を見たバンナイの瞳に、口を開けて絶句するバショウとブソンの顔が映る。
二人は一番肝心な事を忘れていた。
『展示品は偽物。美術館は過去に数回窃盗にあっている。すべて倉庫に保管。欲しているのは価値の高い台座』
どれも、バンナイの口からのみ聞いた事柄だった。
そんな話は聞いた事がないと言ったブソンに、内部にしか知らされていないと答えたバンナイ。今思えばその時点で疑問を持つべきだったのに、二人は確認を怠ってしまったのである。
「随分コハクを欲しがってたから、手遅れにならないうちに教えといてやろうと…あれ…どうかしたのか?」
バンナイの声は、もう二人の耳には届いていない。基本的すぎるミスでの心のダメージが大きかったのか、テーブルには物言わず突っ伏す二つの体。
「俺、何かまずい事言ったかな」
そのつぶやきに、苦虫を噛み潰したような顔のモンドが伏し目がちに、
「この件はさっき終了させたばかりなのに、それが偽物だったなんて。精神的にとどめを刺されたようなものですよ」
実はつい先ほど、石をシラヌイ博士へ送ったばかりだったのだ。
「…この男に関わるとろくな事にならない。あの時、ぐうの音も出ないほど叩きのめせばよかった!」
そう吐き捨てるバショウも、うなずくブソンも、今後もバンナイと付き合う事になるとは微塵も思っていなかった。