ペテン師は誰だ!・15

絵板もの

「どういう計画だったのか、我々に教えて頂けませんかね」
口調こそ穏やかなバショウだが、バンナイを見るその目には険しい光がある。しかし彼はそんな事にはまったく気づいていないか、あるいは気にならない様子で、
「俺の目的は石でも台座でもなく、ジョウト伝説が描かれたという三枚の石版だったんだ」
「石版?」
「なかなか価値のあるものでね。セキュリティのガードが思った以上に堅くて、攻めあぐねていたところだったのさ」
「そこに俺達が現れたってわけか」

石版は大判ノート程のサイズで、一枚でも2kg前後の重さはあった。それを三枚まとめて素早く盗み出すのは、バンナイ一人では難しかったのだろう。そこで、同じ目的で美術館に来ていたロケット団に目をつけた。
彼らのターゲットを手に入れ、それをエサに石版のある倉庫へおびき寄せる。そして自分はジュンサーになりすまし、非常ベルで駆け付けた警察官に都合のいい場所へ石版の移動を命じる。
美術館荒らしの言う事など誰も聞く耳は持たない。ジュンサーがバンナイだと疑う者はいないのだ。

「しかし…始めから館長に変装して運び出した方が、安全で簡単だと思いますが」
バショウにとってそれは、バンナイが自分達を利用していると思ったきっかけだった。安全パイを捨ててまでロケット団に執着するのは、裏があるからだと考えたのである。
「正直に言うと、変装しなかったんじゃなくて出来なかったのさ。あそこは館員同士の個人的なつながりが密接でね。仮に館長として移動を命じる場合でも、個々のどうでもいい情報を把握する必要があった」
つまらなさそうにため息をつき、男はやれやれというふうに肩をすくめて見せた。

「美術品の膨大な知識、高い防犯意識に加え、それぞれの個人的な趣味嗜好やら話題やら…ただ変装すればそれで済むレベルではなかったんだよ。完璧になれないのなら、最初からやらない方がマシさ」
「怪盗にも出来ねぇ事があるのか。こいつはお笑いだな」
「俺なりのこだわりとプライドだ。なんとでも言え」
悪意を吐き出す金髪に憤りながら、バンナイは自分を囲む四つの影をぐるりと見回した。
「それで、ロケット団精鋭諸君をハメた俺をどうするつもりだい?」

「マグマ団はすでにない。貴方はただの泥棒であり、我々も正規の任務ではなかった。コハクはブソンが持ってきました。もう貴方にも用はありません。ここで別れるのが最良だと思いますが…いかがでしょう」
「バショウ…と言ったか…面白い男だな。ロケット団が俺を見逃すというのか」
「誤解のないように言っておきますが、貴方と関わっても得にはならないという判断です。これ以上つまらない騒ぎに巻き込まれるのはごめんですからね」
今回はシラヌイ博士からの個人的な要請だったため、本部には特に報告をしていない。だから、醜態とも取れる一件を知られるのは避けたかったのである。

「お互い今後一切の関わりを持たないと約束して下さい」
「いいだろう。約束は分らんが、努力はしてみるさ」
こうしてこの騒動は終わった。