ペテン師は誰だ!・14

絵板もの

道の向こうの闇に二つの光が浮かび上がり、エンジン音が地を這うように近づいてくる。
ぼんやりとした赤い影はやがて軍用車の形を成し、深紅のRをつけた赤いジープがバンナイの逃げ道をふさぐように止まった。
乗っていたのはブソンだが、運転手はもちろんモンドである。
バンナイはここで初めて、ブソンと一緒にいたバショウがモンドの変装であった事に気づいた。

「お前の知っている通り、本物のジュンサーは今日は非番だよ」
警察帽とカツラの下から現れたのは、ストレートヘアをアゴの線で切り揃えた目鼻立ちの整った青年、コジロウ。
彼はこの作戦のために、カントーからここまで呼び出されて来たのである。
「…なんてこった…騙すつもりで、俺自身が騙されたという事か」
バンナイは自嘲の笑みを浮かべながら、今なお腕組みを解かないバショウに向き合い、
「すべてお前の計画か…たいしたものだな。どの辺りからお前の作戦が始まったのか、興味があるな」
聞きたくて仕方ないといった目で、男はバショウを促す。
「別にたいそうな事はしていませんよ」
抑揚のない声で、綺麗な形の唇から淡々と言葉を返す。
バンナイの目的は他にあるのではないか。そう考えた時点で、常に彼の裏をかく作戦を立てたのである。

大学の端末で情報収集をしていた時に見つけた、警察署の勤務体制表。実行日当日がジュンサーの非番と知り、バンナイは絶対にこれを利用すると確信したバショウは、その場でコジロウに連絡を入れた。
警報装置の通報システムを密かにブソンに確認させ、すでに設定されていた「自動通報」を解除させた。最初の設定は、間違いなくバンナイの意向が働いているからだ。
逃げ道のルートは、おおよその予測が出来た。後はその付近を手分けして封鎖してしまえばおしまいである。

バショウの説明に、バンナイは目を丸くして驚いて見せた。
自分の考えをことごとく読まれているような、そんなマジックにも感じたのだろう。
「仕事に何かしらのこだわりを持つ者は、本人も気づかぬうちに行動や思考がパターン化される場合が多い。過去の資料を読みほぐせば、必ずどこかにヒントが見つかる。バンナイ…貴方も例外ではなかったという事ですよ」
「俺にはこだわりがあると…そう思ったのか?」
「間違っていましたか?」
紫の闇の男はゆっくりと首を横に振り、間違ってないさ…とつぶやく口元は、どこか嬉しそうに歪んでいた。