ペテン師は誰だ!・13

絵板もの

「ちいっ!」
長居は無用だ。制服を脱ぎ捨てジュンサーの頭の上をフワリと飛び越えると、男は敷地の奥の茂みに消えた。
ほどなくエンジン音が響き、バンナイを乗せたバイクがうなりを上げて茂みから外へ飛び出した。
「待ちなさい!」
ジュンサーのバイクが、ロケットのような勢いで後を追う。
「俺達も行くぞ!」
「はいっ!」
二人のロケット団も隠してあった車に飛び乗ると、まるで竜巻のように風を巻いて走り去った。
爆発音を聞きつけたのであろう。たくさんのパトカーのサイレンが、大波のように倉庫の方へ押し寄せてくる。
だが、当事者はすでに誰一人残ってはいない。

路地裏と大通りを交互に進み追っ手を翻弄しながら、バンナイのバイクはやがて街外れの丘へやってきた。
逃げ道の確保をしてあったとはいえ、これは予想外の展開だ。なぜなら、この計画はジュンサーの非番の日を選んで立てたものだったからだ。
ブソンの様子から、彼が電話でジュンサーに連絡をしていたと見るのが妥当だろう。

その時、突然目の前に巨大な影が立ち上がった。
「アイアンテール!」
声と同時に、バンナイ目がけて大きな衝撃が落ちてくる。咄嗟にバイクから飛び降りるが、そのスピードに乗ったまま体を道路にしたたかに打ちつけ、人のいなくなったバイクはアイアンテールであっけなく破壊された。
顔を上げた男を見下ろしていたのは、月を背に立つ鋼鉄のヘビ・ハガネールとバショウであった。

「お前…なぜここにいる?」
時間的にみても、バショウはブソンとともにまだ自分の後続にいるはずではないか。いや、今はそれどころではない。現にバショウは目の前にいるのだ。
素早く体を起こし、バンナイは困惑の表情を浮かべながらもモンスターボールを取り出す。
が、いきなり背後からその手を掴まれ、その拍子にボールが手から滑り落ちた。
「なっ…!」
驚き慌てて跳びすさった彼の視界には、あの青い制服のジュンサーの姿。
彼女はニンマリと笑いながら、わけが分からないという顔の怪盗青年に向かって言った。
「それだけ見事に引っかかってくれれば、俺もこんな恥ずかしい格好をした甲斐があったというものさ」
見目形はジュンサーなのに、吐き出された言葉も声も完全に男。そう…まるで変装した自分の時のように。

「ご苦労でした、コジロウ」
ジュンサーにチラリと視線を走らせ、そっけなくねぎらいの言葉を口にするバショウ。
「バンナイ…もう逃げられませんよ」
ハガネールのいかつい顔が、ニッと笑った気がした。