突撃! バトルファクトリー・1
バショウとブソンは、ホウエンでの任務を終え本部への帰路についていた。
ホウエン地方はロケット団の管轄外のため、些細な事案でも工作部が担当することが決まっている。今回も任務自体は難しいものではなかった。
寒さ厳しい今の季節、比較的暖かな昼でも車窓を開ける事はままならない。長時間の移動で暇をもてあましていたブソンは、助手席の背もたれを倒しボンヤリと空を眺めている。
が、突然大きな体をバネ仕掛けの勢いで跳ね上げると、運転席の相棒に向けて声を張り上げた。
「バショウ、車を止めろ!」
「!」
半分驚いたような形で、バショウは慌てて急ブレーキをかけた。ここが山の中のさびれた街道でなくハイウェイだったら、二人の命はなくなっていたかもしれない。
「い、一体何事ですかっ」
いつも冷静な彼にしては珍しく、激しく動揺した表情でブソンをにらみつける。
だがブロンド男はそんな事は気にもとめず、至極真顔でフロントガラスを天に向かって指差した。
「あれ、見ろよ」
その言葉にいざなわれ、バショウの綺麗なアゴがクイッと上がる。
二人の瞳に映ったのは、真昼の太陽を翼に反射させ青い軌跡を描きながら飛ぶ伝説の鳥。
「あれは…フリーザー…?」
「間違いねぇ。追うぞバショウ。せっかくのチャンスだ…有効に使わなきゃな」
もどかしそうに車を急発進させると、まるでバショウらしくない少々荒っぽい運転で後を追い始める。
ブソンは座席前面にはめ込まれた端末のキーボードを指先で叩きながら、ディスプレイに流れる情報の波を黙って見つめた。
「情報部にもたいしたネタは入ってないみてぇだな」
この端末は、無線を使用し情報管理部のデータファイルに直接アクセス出来る仕組みになっており、データは常に更新されている。しかし、それをもってしてもフリーザーに関する詳細は分からなかった。
どれくらいの時間が経ったろう。
青い影は山をぬけ森を飛び越え、広大な敷地の中に建つ小振りのドーム型の建物に入っていった。
「ここは…バトルファクトリー…」
フロンティアブレーンの一人、ダツラのいるバトルファクトリーである。広い敷地内には岩場や森や川があり、その隙間にいくつかの建物が点在している。
バトル場は表通りに面した所にあるが、フリーザーが入っていった建物は裏山に面しており、その規模や様子から工場か作業場と思われた。
建物を見下ろせる位置に停車し、素早くコートと防寒具を身につけ寒空の下に飛び出すと、二人は双眼鏡で目標を追い始めた。
大きく開いたクジラの口のような出入り口から、中の様子をレンズ越しにうかがう。
いた! 高貴な青い鳥!
バトルファクトリーの主人であるダツラの側で羽を休めている。
バショウの抑揚のない言葉が、形のよいその口元から静かに吐き出される。
「随分と仲のいい事だ…まさか人になつくとは思いませんでしたね」
「フリーザーは奴の手持ちって事か?」
「それは分かりません。しかし、我々にはそんな事は問題ではない。ゲットするか否か…それだけです」
「なら答えはひとつだろう。ゲットするんだよ、フリーザーを」
二つの影は、高く昇った太陽の下で悪意に満ちた微笑を浮かべた。