バショウはメリープの夢を見るか・6
ムサシが小走りにやってきた。
「あんた、ケガはしなかった?」
問いかけに、バショウは自分の左手首の袖をめくってみた。アザはない。あれは夢だったのか…いや、この状況下で夢を見るのは不自然だ。では夢ではないとしたら?
彼はここでひとつの仮説を立てた。
さっきまでの「不思議なロケット団」は、どこか別世界のものだったのではないか。
向こうのブソンが、手首のアザは先週のものだと言った。
バショウが医務室で目覚める前からアザはあり、今ここでの自分にはない。つまり、少なくとも体は別人ということになる。
これは、互いのバショウの中身だけが入れ替わった…とは考えられないか。
思い当たる原因は「物資転送装置の電気系バグ」だ。
放電を続けるこちら側の機器と、頻繁に落雷が起きる向こう側の環境が二つの世界のつながりだと、彼は予想していた。だから、ブソンに装置の解体を話したのである。
なぜそれが入れ替わりにつながるのか、そこまでの理由は分からないのだが。
「ソーナンス、ミラーコート!!」
それは、医務室のベッドで目覚めたバショウが直前に聞いていたムサシの声だった。
世界のすべてを動かす「何か」は、バショウが別世界で過ごした時間を切り取り、その前後をつなぎ合わせ、彼という存在を「なかったこと」にした。
向こうのバショウも、医務室で目覚めている頃だろう。
二つの世界は、それぞれのバショウを異物と判断したのかもしれない。それが彼の出した結論だった。
原型を留めない転送装置を涙目で片付けると、モンドは、また出直してきますと言ってジープで去って行った。
「キズ薬がくるまでは、派手な特訓はできないわね」
「タッグバトル競技会の相方があなたなら、私はあまり心配はしていませんがね」
ムサシの顔が、幽霊でも見るかのように歪んだ。
「あんた、どうしたの? 穏やかすぎて不気味なんですけど」
「あまり言いたくはありませんが、こちら側のあなたの評価が私の中で若干上がったということです」
「意味わかんない」
「分からなくてもいいですよ」
それから数日後。
話を聞いたブソンに馬鹿笑いをされ、すべてを「夢」で済ますことにしたバショウがいた。