バショウはメリープの夢を見るか・5

「ソーナンス、ミラーコート!!」
ハッと我に返ったバショウの視界に、迫りくる複数の稲光りが飛び込んだ。それらは、すぐ目の前にあるかもしれない透明の壁にぶつかり拡散した。
続く次の稲妻が低い位置でスパークし、その衝撃が岩を砕き地面をえぐっていく。
「バショウ! なにをボンヤリしてんのよ!」
激しくバショウを責めるムサシに、分かってますと声を荒らげる。そして、飛び散る石のつぶてを避けながらムサシの真横につくと、
「まったく、とんだ遠足だ」
「モンドがブロック機能を作動させたけど停止する様子もないし…そろそろ泣きが入る頃かも」
その時、パアンッと乾いた音が響き、数十メートル先から空に赤い発煙弾が打ち上がった。SOSの印である。
「ほうらね」
抑揚のないムサシの言葉を聞きながら、バショウは彼女の前に進み出ると声を張った。
「出なさい、ハガネール!!」
地中で待機していた鋼鉄の蛇が、大地を揺らして姿を現した。


ことの発端は、訓練の名を借りたオリエンテーリングだった。
くじ引きでペアを決め、山岳フィールドでタッグバトルをしながらゴールを目指すゲームだが、実際は競技会のためのポケモンの育成と特訓である。
バトルに必要なアイテムは、注文を受けた配達局員がそれぞれのペアに直接渡しに来る。
ところが、配達に使う転送装置に不具合が生じ、ムサシとバショウのもとへ来た時にはすでに暴走状態であった。

「ハガネール! アイアンテールで機器を潰しなさい!」
「ソーナンス! ミラーコートで援護して!」
発煙弾が打ち上げられた場所には赤いジープがあり、転送装置はそこから更に数メートル離れた所に転がって、電気を縦横無尽にスパークさせている。
ジープの影から、配達局員のモンドが顔を出して叫んだ。
「すいませーん!! 本部からの連絡では、出来るだけ傷を付けずに止めてほしいとのことなんですがーー!」
しかし、言い終わらないうちにそれはハガネールの尾で砕かれた。主人の命令通り、まさに潰したのである。