バショウはメリープの夢を見るか・4

その時、前ぶれなく大きな雷鳴が轟いた。共鳴して格納庫全体がビリビリと小刻みに震える。
不意をつかれたかのようにバショウの肩が跳ねる。しかし、他の団員は「またか」という顔で天井を仰ぐ。
「部外者が来ないのはいいことだが、雷が多すぎるのも問題だと俺は思うね」
不安定な天候が多いことが「人の入らない山奥」の理由でもある。もっとも、ブソンのような機械に携わる者にとっては脅威でしかない。
面倒臭そうな彼の愚痴と同時に、バショウの頭の中に、ドラマのセリフよりずっとリアルで強い声が響いた。
「ソーナンス、ミラーコート!!」 と。


格納庫の入り口方面から、白い団服に身を包んだ小柄なロケット団員が息を切らせて走ってきた。
「お疲れ様ですー! バショウさん、もう体調は大丈夫なんですね!」
そして、バショウに向かってバッと力強く敬礼をすると、無邪気とも言える明るく大きな声で、
「呼ばれて駆けつけ颯爽参上!! 配達局のモンドです!!」
「……これはご丁寧に…どうも…」
モンドお前もか…と、力なく応えるバショウを気にもせず、この若い局員は「そういえば…」としゃべり始めた。
「さっき配送センターで聞いたんですけど、今日の雷はものすごいって予報だそうですよ」
「そんなことより、聞けモンド。先週俺とバショウがクレーンのワイヤーに腕をぶつけてな…」
「ブソン」
唐突にバショウが二人の会話を切った。
「私がぶつけたのはここですか?」
左腕の袖をめくり白い手首についた茶色いシミを相棒に向けて見せると、ブソンはそうそうと頷いて肩をすくめた。


自身の魂が引っ張られるような感覚とともに、医務室へ運ばれる前の記憶がバショウに甦った。
これが夢だとしたら、まさに今、目覚める瞬間なのだと彼は悟った。
「ブソン、私はあなたの知っているバショウではありません」
突然早口で意味不明なことを言い出す相棒に、ブソンはあからさまに怪訝な表情を作る。
「お前、頭を打っておかしくなったのか?」
「説明している時間がない。いいですかブソン。ブラックアウト後、その物資転送装置は解体しなさい。それは欠陥品です」
「装置がなんだって? どうしたんだよ、バシ…」
突然、凄まじい音と地響きが起こった。格納庫近くに落雷があったのだ。
こうこうと光るすべての照明が落ち、暗闇からもとに戻った時、ブソンとモンドの視界に入ったのは転送装置の横に倒れるバショウの姿だった。