特務、逃げるの巻・1
ポケモンレンジャーが常に仕事熱心なのは知っている。しかし、それにしてもこのジャッキーという男はしつこすぎやしないか。
崖っぷちに追い詰められたバショウとブソンは、視界に入るレンジャーの赤い上着にうんざりした。
「逃げ場はないぜ。大人しく捕まった方が身のためだと思うがな」
断崖絶壁は奈落への入り口のようだ。もう逃げられまい。
ジャッキーは、いまいましいほどさわやかな表情で憎らしい言葉を吐いた。
「俺達も、ずいぶんと甘く見られたもんだな」
サングラスを整えながら、ブソンはフンと鼻を鳴らした。ロケット団の任務はすでに終了している。あとはここを逃げ切ればいい。
「逃げ道なんて、探せばいくらでもあるんだよ」
言うな否や、彼はいきなり相棒の体に腕を回すと、
「飛ぶぜ、バショウ!」
「飛んでどうするつもりですかっ?」
「お前に任せる!」
バショウの細い体を半ば強引にかかえると、二人は大きくダイブした。
「何やってんだ! 自殺行為だぞ!」
驚きのあまり髪を逆立て、ジャッキーは慌てて崖に走り寄った。彼の目には、ロケット団の行動がまるっきりの無計画に映ったのだ。
二つの体は、互いにしっかりと絡んだまま落ちて行く。
「貴方と心中なんて御免ですからね!」
「寂しい事言うなよー!」
彼らは、捕まる事より死を選ぶようなロマンチストではない。
捕まる事で先をつなげられるのなら捕まるし、逃げ切る自信がわずかでもあればためらわず行動する。