ペテン師は誰だ!・10

絵板もの

「一体どういうつもりなんだ、バショウ」
帰りの車の中で、ブソンは運転席の相棒に少し乱暴に尋ねた。
「腹が立ったから…と答えたら、貴方は笑いますか?…ブソン」
真っ直ぐ前を見つめたままハンドルを握る彼の腹の中は、ブソンにも分からないくらい煮えくり返っていたらしい。サングラスを鼻の頭まで下げ、金髪男は驚いた表情でバショウの顔色をうかがっている。
「価値も分からず下見に来たのか…と言われた事か?」
「違いますよ」
静かな否定。しかし、それが逆にバショウの怒りの深さを表しているようでもあった。

「バンナイは、展示物がレプリカである事を知った。だが、単独の自分では人知れず本物を盗むのは難しい。そこで我々にアタリをつけた」
「まぁそうだな。奴は、俺達がロケット団と知っていて近づいたんだからな」
「それを信用しますか?」
「え?…」
車内に沈黙が続いた。
盗っ人を信用するのかと聞かれれば、答えは否である。だが、バンナイと自分達は狙うものが同じに等しい。目的が同じなら、犯罪者同士が一時的に手を結ぶのは珍しい事ではあるまい。

しかし、バショウの見方は若干違っていた。
「彼ほどの男なら、美術館の館長にでも化けて持ち出すくらい造作ない。それをわざわざ盗み出す理由は?」
「…確かに、俺達と組んで盗み出すってのはなにかと面倒だよな」
「バンナイには他に目的がある。台座を欲している事だって、真偽のほどは分かりませんよ。彼は明らかに我々を利用しています」
そう。バショウの怒りは、ロケット団でもエリートに組する自分達が、軽く見られた事に対するものだった。
「あちらがその気なら、私にも考えがある。ロケット団を甘く見た事を後悔させてやります」
そう言ってニッと歯を見せるバショウに、ブソンはこっそりと冷や汗を垂らしていた。

翌日、バショウは通っている大学の端末からさまざまな情報を仕入れていた。
偽造IDであちこちの機関に入り込んでは、必要なものだけを抜き出しているのである。
バンナイと計画した決行の日の情報を調べていた彼は、そこで興味深い事柄を目にした。
「なるほど…そういう手もありますね」
そしてバッグから携帯を取り出し耳に当てると、彼は端末の画面を見ながら小声で会話を始めた。他に誰一人いないこの部屋で、小さいけれど綺麗な声が空気に混ざって流れていた。