ペテン師は誰だ!・11
作戦決行は、それから一週間後の深夜1時だった。
石と台座には特別なセキュリティ装置がついている事は、バンナイからの情報で確認済みだ。二人で同時に石と台座を持ち上げ、すぐに非常スイッチを切ってしまえばいいのである。
もっとも、バショウの立てた計画に従い、すでにブソンがこのシステムに手を加えている。それが吉と出るか凶と出るか、この計画で一番の心配事であった。
床下から、ゆっくりと板を持ち上げ二つの影が現れた。バショウとブソンである。
全身を黒装束でかため赤外線用のゴーグルをつけているが、倉庫内の明かりはまるで満月のように白く輝いているため、かえって周囲から浮いて目立っていた。
「普段は暗いんでしょう? こんな時間に明るくしてしまって大丈夫なんですか?」
「この倉庫は、倉庫部分には窓がついてねぇんだ。明かりはここだけだから、外に漏れる心配はないのさ」
守衛室の二人のガードマンは、変装したバンナイが持ち込んだ睡眠薬入りの夜食でぐっすり眠っている。監視カメラには偽の映像を見せているので、二人の姿が記録に残される事もない。
大小二つの影は、月明かりに似た白い世界をターゲット目指して駆けて行く。
石と台座のある場所はすぐに分かった。
離して保管されているとはいえ同じフロア内。同時に持ち上げて決められた秒数内に非常スイッチを切るというのも、さほど難しくはなさそうだ。
二人はそれぞれの保管ケースに近づくと、そっとアクリルのカバーを外した。
そこへ、いつからいたのか怪盗バンナイが姿を現した。彼は石と台座の間のちょうど真ん中の位置に立つと、バショウとブソンを交互に見た。
「今から三つカウントをする。三つ目で物を持ち上げ、底についている警報装置のスイッチを切れ。解除のタイムリミットは5秒だ…いいな」
ロケット団の二人は、互いに目配せしながら確認を取るように小さくうなずく。
「では行くぞ。……ワン、ツー、スリー!」
まるでビデオを早送りにしているようなスピードで、彼らはまったく無駄のない動きで事を終えた。
「よし、うまくいった!」
ブソンの歓喜の声が上がり、バショウもバンナイもホッと肩の力を抜いた次の瞬間。
ジャリリリリリリリッッッ……!!
解除したはずの警報装置が、耳をつんざくけたたましい音を倉庫中に響かせる。明かりの電源が落ちたのか、白かった世界は暗闇に飲み込まれた。
「!…装置は確かに切ったはずなのにっ!」
「とにかくここから逃げろ!」
驚愕の音色を吐き出すバショウに、ありったけの声を張り上げ叫ぶバンナイ。相棒の細い腕をつかみ、長い足で床を蹴って走り出すブソン。
この時、怪盗の口元がニマリとゆがんだ事に二人はまったく気づかなかった。