ペテン師は誰だ!・4
月明かりに照らされた茂みをかきわけ現れた青年は、二人を叱りつけるように言った。
「早く早く! 警察が来る前にこちらへ来て下さい!」
言われるがままに、バショウとブソンはモンドの所まで歩を早めた。
モンドは青年と呼ばれる年齢でありながら、まるで少年のような顔立ちをしている。実際この三人の中では一番年下であろう。しかし、今はその幼い顔に険しいシワが刻まれ、動きは工作員並みの素早さだった。
腰をかがめ、生い茂った木々の奥の奥まで抜けると、モンドは小さな安堵のため息をついた。緊張感が解けたのだろう。その顔はいつもの少年の表情に戻っている。
彼は地に腰を落とし、片ヒザを立てた状態で二人に手招きをした。「周囲から目立たぬように、急いでしゃがめ」と言っているのだ。
「時間より早く来て正解でした。美術館から防犯ベルの音が聞こえたので、もしやと思ってこっちへ先回りしていたんです。一体どうしたんですか?」
「どうしたもこうしたも…」
ブソンは、いまいましげに歯をむいて言葉を吐く。
「システムを解除したはずなのに、展示ケースを動かしている間に作動しやがったんだよ」
「解除方法に間違いはなかったはずです。どういう事なのか、私にも分かりません」
モンドは少し考え込んでいる様子だったが、もともとそういう方面には明るくない。解答を出すのはあきらめたようで、すぐにけろっとした笑顔で言った。
「とにかくここを離れましょう。持ってきた台座を下さい。僕が責任を持ってお預かりします」
「ああ、そうだったな。じゃあ、こいつを…」
台座を懐から取り出し、言われるがままに差し出そうとするブソンの腕を、その時バショウが素早く掴んだ。
「バショウ…?…どうかしたのか?」
だが相棒の質問には一切答えず、バショウはギラリとした瞳でモンドを凝視すると、
「モンド、貴方はさっき言いましたよね。防犯ベルの音が聞こえたので、こちらへ先回りした…と」
「え…言いましたけど…それが何か…」
「ならば、逃げる我々を見てはいない。なのに、なぜ貴方は我々が持ってきた物が台座だと分かったのですか?」
ブソンがハッと顔を跳ね上げた。
本来の目的はコハクの石である。それなら、彼はここで「石を下さい」と言うはずなのに。
少し間を置いて、モンドはやれやれという表情で嘆息をついた。それはすでに、いつもの青年の顔ではない。
「俺としたことが、つまらないミスをしたものだ」
モンドの姿の何かは、口の端をニヤリと上げ、聞いたことのない男の声でそうつぶやいた。