ペテン師は誰だ!・5

絵板もの

つむじ風の勢いで、ブソンの拳が空を切ってモンドを狙う。
だが、その唐突な動きを最初から予期していたかのように、彼は地を蹴り大きく後方に跳びすさった。
すっくと立つ男のシルエットは、本当のモンドよりも長身で肩幅もある。バショウとブソンに会った時から常に腰をかがめていたのは、恐らくこれが理由なのだろう。
「…名乗れよ」
ブソンの短く、しかし凄みを含んだ一言に、男は静かに応えた。
「バンナイだ。以後よろしくお見知りおきを…ロケット団の精鋭諸君」

ザッと団服を脱ぎ捨てると、バンナイは生い茂る木々の枝から枝を飛び伝って登っていった。身軽でしなやかな体と紫を基調としたコーディネートは、夜行性の動物を連想させる。
そいつは太い枝の一本に腰かけ、意地の悪いネコのような表情でブソン達を見下ろし笑っている。
「我らをロケット団と知りながら近づいたようですね。しかし、なぜ石を狙っていた事を知っていたのですか?」
「お前達が石を見ていた時、俺はお前達を見ていたからさ。俺を覚えてはいないか?…一度会っているんだぜ」
淡々としたバショウの言葉にバンナイは楽しそうな笑みを浮かべ、そしてその口からこぼれたセリフは、
「そこに少しでも触れると非常用ブザーが鳴りますよ」

いつも冷静なバショウの顔に、初めて驚愕の色が浮かんだ。
そうだ。あの美術館でブソンに注意を促した女性スタッフの言葉だ。声も確かに聞き覚えがある。しかし、あれは女性だ。どう考えても、ここにいるバンナイとは結びつかないではないか。
「目に見えるものだけが真実とは限らない…覚えておくといい」
そう言って、バンナイは懐から石を取り出した。オレンジと黄色がマーブル状に合わさった、あのコハクである。
「そいつは俺達の奪った石だぞ!」
「だが、お前達はこれを落とした。それを俺が拾った。だからこれは俺の物だ」
「てめえは一体何がしたいんだっ!」
天に向かって吼えるブソンを、相棒が片手でそっと制する。その氷のような眼差しが何かを探るようにバンナイの全身を見つめた。

「貴方の行動は、今の我々には理解出来ない。目的は?」
「簡単に言えば…そう…取り引きだ」
ロケット団とバンナイの時間が、同じ方向へ動き出す。