ペテン師は誰だ!・6

絵板もの

「お前達にひとつ仕事を頼みたいと言ったら…引き受けるかい?」
「まさか。なぜ我々が、貴方ごときに手を貸さねばならないのですか」
バショウの口調は穏やかだが、言葉にはあからさまな拒絶とさげすみの音色がある。
「このコハクが必要なんだろう?」
「…コハクと引き換えに仕事を受けろという事ですか…」

だが、バンナイはかすかに息を吐き出すと、少し困ったような表情でバショウを見た。
「違うな。このコハクは、お前達が狙っている本当の石ではないんだ。そして、その台座も本来のものとは違う」
「…ダミーかよ」
ブソンの問いに、紫の青年は「その通り」と言わんばかりにニヤリと笑った。
「街の反対側に美術館の倉庫があるのを知っているか? 本物はそこにある。お前達は石が欲しいんだろう? 俺は台座が欲しい。そこで…」
「それを取ってこいという事か。冗談じゃねぇぜ…てめぇの事はてめぇでやりゃぁいいだろう。俺達には関係ねぇ」

バンナイはしばらく黙ったままだったが、それからひどく不服そうに、
「お前達は人の話を最後まで聞かないな。ここでゆっくり話している暇はない。改めてまた会おう」
言い終わらないうちに、細くしなやかなその体がフワリと飛ぶと、木々の間を駆け抜け闇へ消えた。
少し間を置いて響いてきたバイクのエンジン音が、ここから離れるように遠くへ遠くへと流れて行く。
「奴がここにいて、モンドがまだ来ていないってことは…」
「あの男…どこかでモンドを足止めしたようですね。恐らく防犯システムに細工をしたのも彼でしょうね」
ギリッと奥歯を鳴らしながら、バショウは携帯端末にデータを打ち込み始めた。本部の情報システムにバンナイの照会をしているのだ。

やがて送られてきた回答を、青年は青い瞳でなぞりながら読み上げる。
「バンナイ…ホウエン地方で1件ヒット。怪盗バンナイ。美術品や宝石専門の泥棒。別名…千の顔を持つ男…なるほど、変装の名人というわけですね。それから…」
そこまで読んでから、彼はハッとした顔で言葉を続けた。
「それから…元マグマ団諜報員…だそうです」
「どうりで、俺達ロケット団に対して畏縮(いしゅく)するどころか、態度がでかいと思ったぜ」
ブソンの悪態には返事をせず、青年は形のよい唇に手を添えて何かを考えている。
防犯システムが動いたはずなのに、なぜか美術館には警察車両の一台もやってはこなかった。