例えばこんな日常・10
拾得物の保管庫で失くし物を探すふりをしながら、バンナイはターゲットをまんまと入手しました。
ホムラは待つような素振りで、警官の動きを密かにチェックしています。
どうやら、バンナイを怪しんだ者はいないようです。
その時突然建物の外で爆発音が響き、署内のライトが一斉に消えました。
慌てて保管庫から飛び出すと、薄暗い非常灯の着いた廊下を警官達が走り回っています。
「ブソンの奴…余計な事をしてくれる!」
しかし、そのおかげで逃げ道が容易に出来たのも事実です。
警察署の外には、ブソンが待っていました。
「やっと出てきたか。悪ぃが途中まで車に乗せてくれよ」
「こいつ…そのために、わざわざ爆発音で俺達を外に出したのか」
「一般人は簡単に追い出されたろう? 逃がしてやったんだぜ、感謝しろよ」
突然、ブソンの懐から見慣れないポケモンが顔を出しました。驚いたホムラが尋ねると、返ってきた名前は「シェイミ」。
バンナイ達への応対で人のいなくなった部屋に忍び込み、こっそり盗み出してきたブソンのターゲットなのです。
車の後部席にもぐり込むブソンを、バンナイは腹立たしげににらみつけます。
「邪魔してくれるなと言ったじゃないか」
「よく言うぜ…最初から俺が来る事を知ってたくせによ。俺が事を起こしたら、それに乗じて逃げるつもりだったんだろう?」
「ブソンだって似たようなものだと思うがな」
互いが互いを利用するという考えは同じだったようです。特にブソンは、モンドにわざと意味深な言葉を吐かせバンナイの興味を引くよう工作していました。
計画の段階でバショウが口にした「あちらの手配」とは、この事なのです。
そこへ、先に戻っていたモンドから連絡が入りました。
バショウの病気は、なんと「はしか」。発熱や咳、目の充血等で風邪と思い込んでいましたが、実は感染力の強い伝染病だったのです。
そんな所へシェイミを連れ帰るわけにはいきません。だからといって、どこかに隠すにしてもシェイミは目立ちすぎます。ジョウトではまだ珍しすぎるポケモンなのです。
本部へ運ぶ段取りもついていないため、ブソンは仕方なく数日間バンナイに預ける事にしました。
「シェイミに何かあったら、ただじゃおかねぇからな」
「それが人にものを頼む態度か。もっとも、どんなに重要なポケモンだろうと興味はないけどな」
バンナイは美術品や宝石専門なので、ポケモンへの関心は薄いようです。そうでなければ、ブソンも彼に預けようなどとは考えないでしょう。
「そいつはシンオウから連れてきた研究対象だ。輸送途中でうっかり見失い、よりにもよって警察署で保護されちまったんだよ」
ロケット団への監視が厳しいこの土地では、組織の行動は絶対秘密。そのため、団の証しのロゴを隠し裏で動いていたのです。