例えばこんな日常・9

次の日の夜遅く。
ブソンは忍び込んだ警察署のロビーで、ばったりとホムラに会いました。

警察署は24時間動いているため、探せば入口の代わりはいくらでもあります。しかしホムラは、一般人として正規の手続きを踏んでここにいました。
もちろん、ブソンが彼を一般人と認識するはずもありません。

「なんでホムラがここにいるんだよ」
「たいした事ではない。気にせず行け」
ホムラはその口調から、ブソンがここにいる事をすでに承知しているようでした。


そこに女装をしたバンナイが現れ、女性の声でぞんざいに言いました。
「美術品として出回っていた遺跡の一部が、この警察署に押収されたのを知っているか? 俺達はそいつを狙っている。邪魔はしてくれるなよ」

バンナイは失くし物をした女性としてここに入り込み、隙を見て目標物を盗み出すつもりなのです。夜中の女性一人は怪しまれるため、ホムラを連れとして同伴したのでしょう。

「お前らこそ俺に迷惑かけんなよ」
「そこはほら…お互い様というやつだよ、ブソン」
ブソンもバンナイも、どうやらここで出会う事を前提に動いていたようです。


その頃、バショウの容体はどんどん悪くなっていました。熱が高くなり咳もひどく、気管支の炎症を起しかけているようです。
バショウの携帯電話の着信音が、さっきから何度も鳴っています。
流れるメロディーで、それがモンドからの連絡なのは分かっていました。しかし全身がだるくて、寝返りさえもうてない状態なのです。


電話に出ないバショウを心配したモンドが、ブソンに連絡を入れました。
すぐにバショウの所へ戻るよう指示が来ます。ブソンの足として車を待機させていたモンドは、ここから離脱する事にためらいがありました。
しかし心配は無用。そんな時のための保険が、実はバンナイだったのです。