例えばこんな日常・8

ある冬の夜。
ショッピングセンターでモンドが買い物をしていたところ、バンナイが背後から声をかけてきました。

「若者がオートミールじゃ、栄養が足りないんじゃないかい?」
ギクリとするモンドの耳元で急に声をひそめ、
「おとといの新聞を見たか? 警察に押収された置物の話…お前んとこの二人は何か言ってなかったか?」
「別に何も聞いてませんよ。そもそも僕らは置物なんて興味ないし…それに、今それどころじゃないんです」
バンナイはちらりとモンドに目をやりましたが、「ああそう」と返事をするとそのまま離れて行きました。


実は、バショウが風邪で寝込んでしまったのです。
モンドはブソンに頼まれ、病人の口にあいそうなものを買いに出ていたのでした。しかし、明日の夜は大事な任務がひとつ入っています。

「あちらの手配は出来ているのですか?」
「モンドの話からすると、どうやら大丈夫そうだぜ」
「それにしても、本部の連中にも困ったものです。まさか拾得物として持っていかれるとは…」
「持ち主と名乗り出るわけにもいかねぇしな。まぁ、お前は気にせず寝てろ」


計画の詳細を話し合いますが、その間にもバショウの咳は治まりません。
今の彼では、任務にも彼自身にも支障をきたすのは間違いないでしょう。そのため今回は急きょモンドを入れ、バショウにはここで連絡待ちをしてもらう事になりました。

「服のRのロゴは外して下さいよ。ロケット団と知られてはマズイ」
「まったく…バレねぇように事を進めるってのが一番苦手だ。ネズミが寄ってこなきゃいいんだがな」

何かを察したのでしょう。二人の視線は部屋の天窓に注がれています。


屋根の上の天窓横には怪盗バンナイがいました。
彼は、モンドが口にした「今それどころじゃない」という一言に反応したのです。
バンナイは二人の会話から、「失ったロケット団所有の何かを秘密裏に取り戻す任務」の存在に気付いたようです。しかも「拾得物」という言葉で、それが警察署にあるらしい事も分かりました。

「そういう事か…これは好都合だな」
そうして、怪盗の中にひとつの計画が浮かんだのでした。