例えばこんな日常・7
ある日、ゆえあって顔見知りとなったホウエンの怪盗バンナイが、バショウの前に現れました。
一度は対立したものの、最後には互いに関わらないという約束で別れた相手。バショウは彼の存在を危険視しています。
やたらに気安く話しかけてくるバンナイに無視を決め込むが、向こうにはそんなものは通用しませんでした。
そんなバンナイも、実はブソンが大の苦手。言うより聞くより手の早い大男は、バンナイの言葉を最後まで聞きません。
それでもバンナイは彼らに興味がありました。
ロケット団は、とても危険な毒になり得る存在。しかし、互いがまったくジャンルの違う事をしているのです。
味方にはならずとも、敵になることも恐らくないでしょう。もちろん信頼関係もありませんが。
そのうち、バンナイは二人と同じアパートの下の階に引っ越してきました。
バショウもブソンも、最初のうちはあからさまな警戒心を見せました。しかし、日がたつにつれ互いの部屋を行き来する間柄になってきました。
自分の利益を考えた時、バンナイのような男との間にパイプを作っておいた方が得だと判断したようです。
そんなある日。
仕事のミスで大怪我をしたバンナイが、バショウ達の部屋へ転がり込んできました。
下の階にある自分の部屋と間違えたようですが、その時はもう立ち上がる元気もないくらい重症だったのです。
急きょモンドが呼び出されました。
配達局員として、物を運ぶ事においては特務よりずっとプロなのです。彼ならバンナイを人知れず素早く運んでくれるでしょう。
「人目につかず安全な所へあの男を運んで下さい」
バショウは淡々とした口調でモンドに言いました。
バンナイを助けなければ、自分達も巻き込まれてしまうのです。それだけは絶対に避けなければなりません。
数日後。
動けるようになったバンナイが、アパートへ帰ってきました。バショウとブソンの反応は、バンナイの予想通りとんでもなく冷ややかなものでした。
しかし、彼らとの間にあるつながりは「己の利益」でしかありません。そう考えれば、二人の態度もなんら不思議はないのです。
バショウとブソンに奇妙な形で関わるバンナイ。
そして、通常業務以上の仕事を押し付けられるモンド。
コガネのアパートの一室は、特務工作員の意に反しどんどん賑やかになっています。