例えばこんな日常・6

バトルがてんで弱いバショウは、バトルに誘われる事は滅多にありません。でも、中には彼の素性を知らないゆえか、強引にバトルに引きずり出して笑い者にしようとする不心得者もいます。
そんな状況に陥ってしまった午後の大学で、バショウは渋々バトルを受けます。
グラエナで適当に負けて、さっさとこの場を立ち去りたいバショウ。彼は、いかなる時も目立つ事を嫌います。

しかしボールから出てきたのはグラエナではなく、ブソンの手持ちのプリンでした。


どうやら、ブソンのモンスターボールと取り違えてしまったようです。
「…仕方ない。プリン…適当に相手をしたら負けて試合を終らせなさい」
ところが、プリンはそっぽを向くと相手のポケモンに全力でかかっていってしまいました。ブソンの命令でないため、完全無視を決め込んだのです。

兄のポケモンだと釈明をして何とかその場から逃げ帰ったバショウでしたが、怒りは納まりそうにありません。
ブソンに頼んで、みっちりと怒ってもらいました。


ブソンはプリンを、バトル以外のいろいろな事も出来るように育てています。
強い上になんでもこなせるポケモンとして重宝しているのです。
だからといって、プリンに特別な感情を持っているわけではありません。でも、ある意味「大事にしているポケモン」なのは間違いなさそうです。


ポケモンを道具と位置づけている彼らの中で、プリンは特別な位置にいます。あのバショウも一目置くほどの強さと賢さを持っているからです。
何よりも、「ブソンを好いているため彼にはひたすら従順」というのも重要なポイントでした。

だからブソンは、プリンをある程度自由にさせています。自分にくっついてもまとわりついても、無下に追い払う事はしません。
それが、バショウの目にはとても可愛がっているふうに見えるようです。


ブソンが忘れていったボールを工場まで届けに行く途中、バショウは先日の学生から再度バトルを申し込まれました。
また彼をからかってやろうとでも思ったのでしょうか。
しかしバショウは即答で受けると、今日も兄のポケモンである事を伝えた上で、ためらいなくプリンを出して小声で言いました。
「奴は、先日のバトルでお前とお前の飼い主に悪態をついた男です。遠慮することはない。お前の好きなように戦いなさい」

ブソンの悪口を言った相手をプリンが許すはずありません。バショウは口の端をかすかにつり上げながら、バトルを見つめていました。