突撃! バトルファクトリー・3
「言っとくが、フリーザーはそう簡単に捕まえられるポケモンじゃないぜ」
ダツラの言う通りだ。伝説と呼ばれるポケモンが、そうたやすく悪党の手に落ちるはずはない。だが、ブソンはフンと鼻で笑うと、「そんな事知ってるさ」と言って白い歯をのぞかせた。
「我々とて、勝算がなければ追っては行きませんよ」
「…どういう意味だ」
美麗の青年はコートのポケットから握り拳大の石を取り出すと、ダツラの不安げな問いに答えるかのように彼に向けて突き出して見せる。
「これが何だか分かりますか?…これは、放電する石なのですよ」
石が電気を放つなんて聞いた事もない。口を半分開いたまま、ダツラはロケット団の次の言葉を待った。
「俺達は以前、電気エネルギーを吸収するシステムに関わった事があってな。そん時は失敗しちまったが、そのシステムを上手く再利用して出来たのが…この石ってわけよ」
電気エネルギーを吸収するシステムとは、クリスタルフィールド・ジェネレーションシステムの事である。クリスタルシステムそのものは美しい紫色をしており、バショウの持つ石もそれに似た色合いで、石というよりはガラス玉に近いものだ。
「この石が電気以外のワザを受けると、それを電気エネルギーに変換するのです。時間的制限はあるが、フリーザー一体をマヒさせるくらいなら問題ないでしょう」
「ち、ちょっと待て! そんな事をしたら、お前達のポケモンだってダメージを受けるかもしれないんだぞ!」
「それが何か問題でも?」
眉ひとつ動かさず、バショウは硬質の表情で応えた。
虚勢でも冗談でもない。この二人は本心でそう思っている。ダツラの中に沸々と怒りがこみ上げる。
「お前ら、ポケモンを何だと思っているんだっ!」
「何って…道具だろう? みっともねぇからあんまり熱くなるなよ、オッサン」
せせら笑う男達を前に、ファクトリーヘッドは握った拳を震わせた。
「そんな事は俺が許さんぞ!」
しかし、ダツラの熱く煮えたぎった怒りは彼らには届いていない。
「別に貴方に許可をもらう必要はありません。…グラエナ、フリーザーを追いなさい」
抑揚のない声でポケモンを呼び出すと、バショウは彼に石をくわえさせ外に放った。
何度もこの石で任務をこなしてきたのだろう。グラエナは自分のすべき事が分かっており、その動きにはまったく無駄がない。
ダツラは手にしていたモンスターボールのひとつから、手持ちのポケモンを出そうとした。
…と、その時。突然目の前に赤い影が現れた。
それが何かを見極めるいとまもなく、そいつはダツラの両の頬を思い切り張った。
「グウッ!」
予期せぬ事に驚きつつも踏みとどまり、揺れる上半身に力を込める。ダツラの足元にいたのは、まんまるでピンクで緑の瞳を持つプリンだった。
頭上の中二階から、ブソンの大声が嘲笑にも似た音色を響かせる。
「オッサン! バトルはよそ見してちゃダメなんだぜ!」
プリンの可愛らしい緑の目も、その時ダツラを小馬鹿にしたようにいびつに変わった。