突撃! バトルファクトリー・5

絵板もの

赤い影がダツラの目の前をかすめたのは、まばたきひとつ分のせつなだった。
「あっ」と思った時、それはすでに自分の頭の上におり、同時に落ちてきた帽子のツバで視界が遮られた。
ブソンの手持ちのプリンが、ダツラの帽子を叩いたのである。
その隙に、ミミロルが彼の手にあったモンスターボールを奪い取り、とどめはブソンの強烈なパンチ。
頬を殴られ勢いよく後方に吹っ飛んだダツラは、激しく背中から床に落ちた。
「…ってぇ~…」
赤く腫れた頬をさすりながら、ダツラは素早く立ち上がってブソンをにらみつける。

「てめぇは本当に卑怯な奴だな…っ」
「オッサンが馬鹿正直すぎるんだよ」
口の端をつり上げる金髪男に、ダツラは「ちぃ」っと舌を鳴らした。
「そのプリンは、さっきもいきなり現れて消えた。ボールを見せずにこっそりと出し入れしているのか」
明らかに非難の口調だった。
バトルは、ボールからポケモンを出す時点で開始だ。正々堂々の意味でもある。隠れてポケモンを出し入れする行為は、言わばトレーナーの品格の問題なのだ。

だが、ブソンはふてぶてしい笑顔で、
「プリンは最初からボールには入ってねぇよ。こいつは俺の隠しだまみたいなもんで、いつもコートの中にひっついているのさ」
そのピンクのポケモンは、いつの間にかブソンの足元に戻り、黒いブーツにピタリと寄り添っている。
「プリンは、よほどお前の事を好きらしいな」
「…だったら何だってんだよ…」
「大切にしてやれと言ってんだ。ポケモンは本来、人間のパートナーであり…」
「オッサンは…!」
大声でダツラの言葉を遮って、ブソンは険しいほどの真顔を作った。

「…オッサンはメカが好きらしいな。そいつを作る時、使う時、あんたは部品や機器類を粗末に扱うか?」
「なんの事だか知らんが、答えはノーだ。俺はあいつらを大切に扱っているし、手入れだってしてやっている」
「だろ? 同じことさ。ポケモンは道具だが、優秀なやつなら粗末には扱わねぇ。俺達は俺達なりに大切にしているんだぜ」
だが、彼とダツラの考えには根本的な違いがある。つまり、ポケモンのパーソナリティを認めるか否か。
ダツラには、少なからずブソンの言い分が分かった。勝利のみにこだわり追求し続けるトレーナーの思考と、大変よく似ているのだ。
しかし、やはりその考えに歩み寄る事は出来ない。
「お前らと意見が合わなくて、とても残念だよ」
「俺もだぜ、オッサン」
フロンティアブレーンとロケット団が意見を合わせるなど、そもそも最初から無理だったのである。