バショウはメリープの夢を見るか・2
バショウの不安定な言動が気になったブソンは、「何か思い出せれば」と、バショウが倒れた格納庫へ彼を連れて行くことにした。
ここは、人の入らない山奥の地形を利用して作られた格納専用施設だ。重機3台くらいなら余裕で保管できる高さと広さの倉庫が、複数点在している。
「今日は各方面が物資を受け取りに来る日だから、いつもより人が多いんだ」
電気系の保管施設に入ると、混み合う中央を避け、二人は脇の荷物棚沿いの通路を倉庫の奥に向かって進んだ。
その時、交差した通路の右側から二つの影が飛び出した。
「おっと、危ない!」
声の主はぶつかる寸前に動きを止め、勢い余ってたたらを踏んで、
「あ~ごめんごめん。ちょっと急いでいて…って…あれ? バショウじゃないか、久しぶりだな」
「ちょっとコジロウ! 急に止まらないで…よ……バショウ? なんでこんな所にあんたがいるのよ」
明るい軽さでにこやかなコジロウの後ろから、眉間にシワを寄せたムサシが苦々しげに声をかけた。
バショウとムサシは互いが互いを好いていないため、二人が顔を合わせると場の空気が緊張する。
「そういうあなたこそ、なんなのですか」
冷たい視線で一べつする銀髪の青年の言葉が、ムサシとコジロウの「スイッチ」を押した。
「なんなのですかと聞かれたら!」とムサシ。「答えてあげるが世の情け!」とコジロウ。
突然始まる前口上に、バショウは慌てて相棒の服の裾を引いた。
「ブソン! いったい何が始まったのですか!?」
「お前、知らなかったっけ? 変な口上を垂れるのが一部で流行ってるらしいぞ。俺もよく知らねぇが」
眼の前で繰り広げられるパフォーマンスは、バショウを硬直させた。
コジロウは分かる…コジロウなら、こういうパフォーマンスをやってもおかしくはない。しかし…
しかしムサシは、自分の知っているムサシではない。あのプライドが高く恥を嫌い、攻撃的な目で周りを見ている彼女ではないのだ。
「愛と真実の悪を貫く!」「ラブリーチャーミーな敵役!」
吠えるムサシに、続くコジロウ。
「らぶりーちゃーみー……?」
衝撃的すぎてぎこちない発音で復唱するバショウを、ブソンは「あーあ」という顔で見ている。
「行くぞバショウ。時間の無駄だ」
大きな手でバショウの背中を小突き、強面の相棒は前進を促した。
二人の後方では、前口上がちょうど終わったところだった。